toggle
2019-09-27

カーペンターズ / Now & Then (1973年)

フェラーリ 365GTB/4 “デイトナ”

古いアメリカ映画で見るような、テレビアンテナの見える平凡な家、赤くて丸みを帯びた2ドアのクーペ。カーペンターズが1973年リリースした5枚目のアルバム「ナウ&ゼン」のジャケットは実に印象的だ。このアルバムは「シング」「ジャンバラヤ」そして「イエスタデーワンスモア」といった名曲がちりばめられているカーペンターズの代表作だ。

背景の家はカーペンターズの2人の生家、そしてクルマは当時のフェラーリのフラッグシップモデル365GTB/4「デイトナ」、そしてまるで写真のような美しいイラストは70年代よりアメリカで活躍している日本人アーティスト長岡秀星氏によるものだ。長岡氏は当時アメリカでキャリアをスタートさせたばかりで、このアルバムでは”Design Maru”という名前でクレジットされているが、この作品で世界的に名を知られるようになりその後「ジェファーソンスターシップ」「アース・ウインド&ファイア」をはじめとする数多くアルバムジャケットを手掛けることになる。

アメリカにどこにでもある普通の家と誰もが口ずさめるカーペンターズ、一方で普通の人には手が出ない高価なデイトナ、という対比はとても不思議だ。リチャードはクルマ好きで知られているが、この作品のカバーにデイトナを登場させたのはどうしても自慢したかったから、というエピソードがあるそうだ。365GTB/4の愛称「デイトナ」の名前は1967年のデイトナ24時間耐久レースでフェラーリが歴史的な1-2-3フィニッシュを決めたことにちなんだもので、これを機にフェラーリは多くのアメリカ人のあこがれの的となる。デイトナ・スピードウェイのあるこの町はフロリダ半島太平洋岸にあり、高級リゾートビーチとして有名だ。

このアルバムに収録されている「イエスタデイ・ワンスモア」は世界的に大ヒットするが、リチャードは1985年にカレンのボーカルトラックを残したままピアノを新録音に差し替える。同時に、やや上ずって聞こえるボーカルのピッチを整え、かなり強めのエコーをかけて全体をきれいに、ていねいに磨き上げた。美しく仕上がった出来に満足したのだろう、その後発売されるベスト盤ではすべてこの新ミックスが採用され、多くの人はこのバージョンでこの曲に親しむことになる。オリジナル版が収録されているのはこのアルバムと1985年以前にリリースされた茶色いジャケットの「The Singles 1969-1973」だけだ。

このアルバムのオリジナルバージョンは、粗削りで、聞きなれたサウンドとは明らかに音質が違う。しかし、言いようのない独特のパッション、勢いがあり,カレンの息づかいがより身近に感じられる。1985年の新録音は冒頭の歌詞 ” it made me smile” の部分のピアノのコード進行が変更されていてすぐ分かるが、新バージョン、つまり世の中で普通に聞こえるイエスタデイ・ワンスモアを耳にするたびに「これじゃない!」感を強く感じる。カレンはドラマーとしても傑出した才能を持ってるが、このアルバムでは「ジャンバラヤ」以外のすべての曲で彼女がドラムを叩く。しかしリチャードはカレンのドラムにはパワーが足りない、として他の多くのレコーディングではスタジオミュージシャンを起用する。とても残念だ。

さて、
アルバムジャケットの「デイトナ」だが、現在でもリチャードの膨大なヴィンテージカーコレクションを収めるガレージに走行可能な状態で保存されているという。

リズム&ドラムマガジン 2008年2月号 あの「デイトナ」が見える
関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。