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2016-05-26

SONY ネットワークウォークマン NW-MS9

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その昔、出張に出るときはポーターブルCDプレーヤーを持ち歩いた。新幹線で隣席に迷惑をかけないようにゼンハイザーのHD-25という遮音性の高いヘッドフォンを愛用した。とはいっても熱心なアウドドアリスナーだったわけではなく、外へ持ち出すのはよほど遠くへ出張するときだけだった。

2000年12月、ネットワーク・ウォークマン SONY「NW-MS9」が発売される。最先端のメモリーオーディオプレーヤーだ。しかしこれを持ち歩くつもりではなかった。メモリースティックの収録時間は1時間程度で、たいへん高価。専用のファイル形式に変換して転送する必要があり、実用的はひじょうに低かった。それではなぜ購入したかと言うと新しいトレンドへの関心、言い換えれば「話のネタ」と言える。「時代は変わるよね」と言えれば良かったのだ。しかし、今日の目で見ると思いもよらなかった感慨がある。

ちょうどこの1年後の2001年にアップルiPodを発売する。そして数年で世の中は変わる。ゲームのルールを変えたアップルはめざましい躍進を遂げ、ソニーはこのフィールドでの主導権を失った。

 

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写真の「NW-MS9」はそれまでのどのポータブル機器よりも小型・軽量。それでいてちゃんとしたサウンドが再生できる。何よりも質感がすばらしく精密感にあふれ、取り外しのできるガム型電池とメモリースティック、過不足ないシンプルな青色の液晶報表示、ストラップを取り付ける環状金具。すべてが丁寧に考えられている。まさに日本製らしい設計、ソニーデザインの一つの典型だ。ガム型電池をフル充電すると約10時間の連続再生が可能だ。この方向に世の中が進めば何も問題はなかったが、突然ゲームのルールが変わった。電池固定、メディア固定で良いのだ、ストラップホールはいらない。その代わり使いやすい転送ソフトを用意する。すべてソニーの逆を行くアップルが覇権を制することになった。実に悲しいストーリーでもある。

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