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2020-10-04

Suchimos / THE KIDS (2017年)

ダッジ・チャレンジャー (2005年~ 第3世代)

少し前に話題になったサチモス・Sachimos。2013年に結成。17年にはNHK紅白に出場する快進撃。これは2017年発売の2ndアルバム。久々にぶらりと訪ねたCDショップでディスプレイされていたジャケットに思わず吸い寄せられた。撮影は写真家・岡田貴之氏。

夜の街を疾走するアメリカン・フルサイズのクーペはダッジ・チャレンジャー。2005年に原点回帰のノスタルジックなデザインでクルマ好きを熱狂させたフォード・マスタングに続き、2008年に25年振りに復活した第3世代のモデルだ。70年代の初代イメージを色濃く投影したレトロなスタイリングが魅力だ。撮影場所はアメリカ?写り込んでいる壁画を見ると「三猿」のモチーフが見える。これはアジアの都市?

壁画の作家はコンテンポラリー・アーティストのロン・イングリッシュ。描かれている場所はニューヨーク・ブルックリンの外れのブッシュウィック(Bushwick)エリア。それぞの猿には「Observe(よく見ろ)」「Listen(聞け)」「Reveal(暴き出せ)」と書かれている。「見ざる・聞かざる・言わざる」の真逆だ。タイトルは「Not a clime~罪ではない」

ブルックリンにはおしゃれな雑貨店、古着屋、カフェが集まっている。観光客も多く家賃も高い。ニューヨークで活躍するアーティストやクリエイターは中心部から離れウィリアムパークの東側の工業地区に移り住む。これがブッシュウィックアリアだ。ストリートは著名アーティストのアートで埋め尽くされ、個性的なファッションショップやカフェ、レストランが数多く並ぶ。

ロン・イングリッシュが描いたこの壁画は、イランで拘束されているジャーナリスト・作家、アーティストを支援する活動の一環だ。まさにこの絵を描いている場面がYoutubeで動画で公開されている。モノクロームでは黒く沈んで表現されているが、実際は白地に鮮やかな緑と赤のイラン国旗のラインが描かれていている。この壁画は「ジャーナルズムは罪ではない」ということを主張している。

「サチモス」は自らについて雄弁に語るバンドだ。検索サイトを開くと経歴や音楽の背景に関する膨大なテキストが出てくる。しかし不思議なことにアルバムの写真については全く言及がない。この写真は特別な意図なしにフィーリングで選んでいるのだろうか。アルバムに収録されている音楽と写真の関連性も見つからない。曲とジャケットは別物として、純粋に写真として鑑賞するのが良いのかと思う。

数多くミュージシャンの撮影をしているカメラマンの岡田貴之氏。彼のポートフォリオサイトではモノクロームを多用したすばらしい作品を見ることができる。しかし、たまたま写り込んでいる三猿の政治的意味を伺わせるものは見当たらない。サチモスにしてもたぶん意図はないだろう。ちょっと無国籍風の、熱気を帯びた夜の雰囲気。純粋にこの写真の世界観を楽しむのが良いだろう。カージャケットとしては実に魅力的だ。

■ Jounalism in not a Crime ロン・イングリッシュが壁画を描く動画
https://youtu.be/8SbD1Oxv4Ao

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