リトル・フィート / FEATS DON`T FAIL ME NOW (1974年)
フォード・リンカーン・コンチネンタル(初代)1948年
リトル・フィート4作目のアルバム「FEATS DON’T TALK ME NOW」。リトルフィートのほとんどのアルバムジャケットを手掛け、もはや彼らの音楽と不可分と言ってもよいネオン・パークによる独特のイラストも絶好調。雲行き怪しく雷鳴とどろく山岳道路を走るリンカーン・コンチネンタル。車内にいるのはジョージ・ワシントンとマリリン・モンローだ。
1969年結成。リトル・フィートはロサンゼルス出身のバンド。「小さい足?」、その通り。バンドの創設メンバーであり34才の若さで世を去ったローウェル・ジョージの足は太くて小さかった。それを指摘された彼はそのままバンド名にした。綴りは「Feet」ではなく「Feat」に。これは 「かぶと虫 ~beetle」を一文字変えて「ビート~beat」とダブルミーニングにしたThe Beatlesにあやかったものだ。Little Feat =「小さな偉業」という意味になる。
音楽のプロから評価されるミュージシャンズミュージシャン。リトル・フィートに向けられる言葉だ。出身地であるLAの洗練と、南部ニューオリンズのサウンドが融合した音楽は、卓越した演奏技術とあいまって完成度の高い魅力にあふれるが一般の耳にはややハードルが高いかもしれない。メロディアスな旋律も、チャートを賑わすヒット曲も、話題を集めるキャラクターもない。純粋な音楽のみが彼らの存在価値だ。リンダ・ロンシュタットがカバーする彼らの曲は輝く魅力にあふれているが、同じテンポで演奏されるリトルフィートのオリジナルはおかしくなるほど泥臭く、独特な風合いだ。
桑田佳祐とサザン・オールスターズのメンバーがリトル・フィートに心酔していることは自ら公言していて有名だ。そもそも両者バンドの構成は全く同じだ。初期のサザンオールスターズの音楽スタイルには明らかにリトル・フィートの影響が見て取れる。一方でリトル・フィートは矢野顕子のデビューアルバム「JAPANESE GIRL」のA面の演奏に参加している。ローウェル・ジョージは矢野顕子の才能に感嘆し、力不足の自分たちのギャラの受け取りを断ったという微笑ましいエピソードもがある。音楽に対しては徹底的に真剣に向き合う。そんな魅力を感じる。
アルバムジャケットのブルーのリンカーン。リンカーン・モーターズ・カンパニーを買収したフォードがその名でリリースした高級車がリンカーン・コンチネンタルだ。T型フォードで大衆にクルマを行き渡らせた創業者ヘンリー・フォードは贅沢な高級乗用車を嫌った。息子で優秀な経営者であるエドセルが、フロリダでの休暇中に自分が乗る名目でコーチビルダーに特注したのがリンカーン・コンチネンタル。もちろんヨーロッパのトレンドを狙ったネーミングだ。これを見た富裕層からの多くのオーダーが殺到し、エドセルはヘンリーを説得して販売に至った。このようにしてリンカーンはアメリカ車として初の高級ブランドとなる。
リンカーン、マリリン・モンロー、そしてジョージ・ワシントン。それぞれアメリカの産業、カルチャー、政治を代表する絶対的なエレメントだ。彼らが不穏な天候の山岳隘路を悠然と走破する様にどのような思いを託したのであろうか。
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