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2020-08-30

エルトンジョン / SONGS FROM THE WEST COAST (2001年)

フォード・クラウン・ヴィクトリア ・ポリスインターセプター (2nd・1998~2012) 

巨万の富と名声。そしてスキャンダルとゴシップにまみれてもなお原点を見つめ、傑出した成果を残した作品。やはりエルトン・ジョンはただならぬアーティストだ。2001年。54歳。25枚目のアルバム。ネクタイをして神妙な表情で写るアルバムジャケットも印象的だ。バックのクルマはロスアンゼルス市警察のパトカー。容疑者を取り調べ中だ。

初期のエルトン・ジョンはスピードにまかせて一筆書きのように、一気に多くの曲を書きまくった。そのどれもが素晴らしい曲だったのが成功の秘密だ。そして54歳のエルトン・ジョン。決して作曲の才能衰えていない。しかしここでは一曲一曲、時間をかけて、立ち止まりながら作り上げているのが分かる。今までと曲の作りが違う。喉の手術で声や音域も変わった。しかしどこを聴いてもエルトン・ジョン。一瞬で彼とわかるフレージング、イディオムは聴くものをかつてのエルトン・ジョンの世界に引き込む。しかしそこにいるのは昔の彼ではないのだ。

このアルバムはエルトン・ジョン「後期」の代表作として評価が高い。かつてのような派手さとは無縁の作品性の高い傑作だが「I Want Love」や「Original Sin」「This Train Don`t Stop There Anymore」といった彼を代表するシングルヒットも含まれている。バーニー・トーピンの詞もすばらしい。このアルバムでは彼が書き下ろた80もの詞を厳選して作品化し、約半年かけて録音されたという。

アルバム名の「ソングス・フロム・ウエスト・コースト」はアメリカ・西海岸でレコーディングしたことにちなむ。ジャケットで彼が座っているのはロサンゼルス郊外のサンタモニカに昔からある「Rae`s Restrant」。1958年オープンの古き良きアメリカのカフェ。安くてボリュームのあるモーニングが売り物だ。毎朝地元の人たちでにぎわう。お店の前であ太った白人のおじさんが2人の警察官に取り押させられ、パトカーに手をついてボディーチェックされている。実はこのCDジャケットは開くと1メートルにもなる横長の360°写真になっていてお店の中の様子がぐるりと見渡せるようになっている。容疑者を取り押さえている姿もしっかりと写っているのだ。

クルマはたまたまそこに写った風景の一部。意図して選ばれたものではない。LAPD・ロサンゼルス市警のパトカー、フォード・クラウン・ヴィクトリア。アメリカでは「クラウン・ヴィック」と呼ばれているらしい。ただでさえ馴染みの薄いアメリカ車の中でも特に日本では馴染みのない1台だろう。フルサイズの堂々たるセダンだが、ラダーフレームのシャーシに後輪駆動という、警察官たちが好む古き良きスタイルのクルマだ。保守層にも人気のあったアメリカではポピュラーなクルマだったが2011年に生産完了。後継モデルはない。最後のフルサイズカーとしてタクシーでは90%のシェアを持っていたが、その多くは日産のNV200に置き換えられたという。

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