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2020-08-15

カラヤン指揮ウィーンフィルハーモニー管弦楽団・R シュトラウス「ツァラトゥストラはかく語りき」他 (1959年録音)

ポルシェ908/2 スパイダー 1969年

クラシックの世界にもクルマを愛する演奏家はいる。愛車トライアンフTR2で不慮の死を遂げたデニス・ブレイン。彼の譜面台には常に最新号の「AUTO CAR」が置いてあったという。フェラーリを愛したベネディッティ・ミケランジェリ。彼は近隣諸国の演奏旅行には必ず自ら運転するV12気筒のフェラーリで乗り付けたという。しかし、アルバムジャケットにクルマが描かれている作品はほとんど見ない。まあ、それは仕方ないような気はする。

そして、ヘルベルト・フォン・カラヤン。レーシング・ポルシェのコクピットに乗る彼の姿に目が釘付けになる。やはり希少なカー・ジャケット・アルバムの1枚はカラヤンだった。クルマは1969年製ポルシェ908/2スパイダーFlounder(ヒラメの意味)しかもこのアルバムは歴史的にひじょうに重要な演奏を記録した名盤だ。

ただ、このジャケットはオリジナルではない。もともとクラシックのジャケットは発売する国や再発売するごとに無節操と言ってよいように変わる。このジャケットは日本で2013年に再販された時のものだ。そもそも録音が1959年、最初のリリースが1960年でクルマが1969年製。時間軸が合わない。この写真を採用した意図は分らないが、カラヤンとクルマ、カラヤンとポルシェのつながりを世に残したいと思ったのに違いない。価値あるカージャケアルバムになった。

イギリスでのオリジナル・英DECCA版
ドイツでのオリジナル 独DECCA版

カラヤンといえばベルリン・フィルでドイツ・グラモフォンのイメージだが、この作品は1950年代終わりにウィーンフィルハーモニーを指揮した英国デッカ・レーベルの一連のシリーズだ。この頃豊富な資金力を持っていたデッカはウィーンフィルと専属契約をしていた。このアルバムにはリヒャルト・ストラウスの5つの交響詩のうち3つを収録。5番目となる「ツァラトゥストラはかく語りき」は特に有名だ。映画「2001年宇宙の旅 」(1968年)の冒頭の印象的なファンファーレはまさにこのアルバムが音源だ。その意味で歴史に記録されるべき作品だ。

「2001年宇宙の旅」のサウンド・トラック・アルバムには、演奏はカール・ベーム指揮ベルリンフィルハーモニーとクレジットされ、実際その演奏が収録されている。映画のエンドロールには演奏者の記載は無い。これは当時の権利、契約の都合でカラヤン、ウィーンフィルの名前は伏せられていたためらしい。この事実は1996年に発売された新たなサウンド・トラック・アルバムの発売で明らかになった。

ヘルベルト・フォン・カラヤンはクルマを愛し、高度な運転技術で高速ドライブや本格的なサーキット走行を楽しんでいたという。数多くクルマを所有していたが、その中でもとりわけポルシェを愛していた。カラヤンからの依頼を受けたポルシェの社長・エルンスト・フールマンは彼のために特製の911カレラRSを作った。カラヤンはザルツブルグの生まれ。ポルシェで映画「サウンド・オブ・ミュージック」の舞台でもあるアルプスの山岳路、ロスフェルト高原道路を走るのを好んだという。

このアルバムは現在ユニバーサルミュージックのWEBショップやAmazonで廉価で購入できるが、アメリカやドイツのAmazonでは手に入らない。音源自体はSpotifyやApple Musicで聴くことができるが、このアルバムアートは表示されない。レーシング・ポルシェのコクピットに収まるカラヤンの姿が写ったこのアルバムは日本専売だ。誰が、どのような思いでこのアルバムのリ・デザインしたのだろうか。考えるうる数多くの写真、絵画の中から敢えてこの一枚のセレクトして、許諾を取る作業までした以上、強い意志はあるはずだ。クラシックアルバムにとってユニークなチャレンジであることは間違いない。作者は「してやったり」などと思っているのだろうか。だとしたら私と同じだ。実に楽しい。

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