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2020-03-15

ハリー・ニルソン / NILSSON SINGS NEWMAN (1970年)

1938年型グラハム・ペイジ 4ドアセダン

1994年に52歳でこの世を去ったハリー・ニルソン、1970年の作品。美しいボーカルと豊かな才能を持つシンガーソングライターであったが、反骨精神にあふれ、アルコールに蝕まれ、財務担当の横領で財産を失い、持病の心臓疾患により非業の死を遂げた。彼の美しい声は「Everybody’s Talkin」(映画ミッドナート・カウボーイのテーマ。作曲はフレッドニール)で耳にしている人も多いはずだ。代表曲「Without you」(作曲はバッド・フィンガー)では3.5オクターブの音域を持つと言われる美しいテナーが聞かれる。ジョン・レノンに才能を評価され「アメリカン・ビートルズ」と呼ばれたこともある。

このアルバムはシンガーソングライター・ランディー・ニューマンがピアノを弾き、彼の作品をニルソンが歌うカバーアルバムだ。地味な作品だが音楽を愛する人々からの評価はひじょうに高い。シンプルだが丁寧に作り込まれた音楽はサウンドもすばらしく、オーディオ装置を心地よく響かせて聴く人を引き込む。

アルバム・アートは ディーン・トーレンス 。彼はサーフ・ミュージックとしてあまりにも有名な「パサディナのおばあさん」で知られるジャン・アンド・ディーンの一人だ。ジャンが交通事故で活動停止になったあとは画家としての活動を広げ、多くのアルバムカバーアートを手掛けた。

ディーン・トーレンスによるセピア色の独特の雰囲気のある水彩画。しかしよく見るとクルマは原画をトレースしたような微妙な線で描かれ、人物はコミック調、いわゆる「ヘタウマ」的な味わいだ。登場するクルマは1938年のグラハム・ペイジの4ドアセダン。後部座席にニューマンが乗り込み、ニルソンが運転している。何とも微笑ましい絵だ。

アメリカでは1500以上の自動車メーカーが登場しては消えた、といわれているが、グラハム・ペイジもその一つだ。1927年に設立。スーパーチャージャー搭載の高性能車で知られる名門だが、戦後はカイザー=フレーザーに買収され、やがて乗用車生産から撤退する。グラハム・ペイジは実は日本とのかかわりが深い。日産自動車は1937年にグラハム・ペイジ社から設計図と生産設備を丸ごと購入し、本格的乗用車「日産70型」を製造、戦前タクシーや公用車として広く使われた。この時導入したたエンジン・シリンダーブロック製造用のトランスファーマシンは長く使われ、その後スカイラインやフェアレディに搭載されるL型、RB型6気筒エンジンのボアピッチの基準となった。数奇な運命を感じる。

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