ラリー・リー/ロンリーフリーウエイ(1982年)
キャデラック・エルドラド・シリーズ6400・1959年型
時代的には山下達郎「FOR YOU」(1982)、大瀧詠一 「A LONG VACATION」(1981)とまさにぴったり重なるアルバム。ジャケットは「FOR YOU 」を手掛けた鈴木英人(EIZIN SUZUKI)さん。クルマはアメ車の代表とも言えるテールフィンが一番派手な59年型キャデラック・エルドラド。中身聞かなくともサウンドが分かるような気さえする。「FOR YOU」のジャケットはモチーフが良く似ているがクルマは描かれていない。ちょっと意外だ。
このアルバムはオザーク・マウンテン・デアデヴィルスのドラムスで音楽的中心メンバーだったラリー・リーの1982年の初ソロアルバムだ。しかしびっくり。オリジナルのタイトルとジャケットは全く別物なのだ。邦題は「ロンリー・フルーウェイ」。しかし良く考えると「孤独なフリーウェイ」というのは変で、ジャパニーズ・イングリッシュだ。原題は「Marooned」。孤立する、置き去りにするという意味なので関連性が全くない、というわけではない。
しかしジャケットは驚愕だ。オリジナルはラリー・リーのポートレートで、ひげ面で、茶色い背景、茶色いジャケットに茶色い帽子。何ともむさくるしく、もう一工夫欲しい。しかしボーカルはハイトーンでとても繊細。メロディーはポップでリリカル。日本の関係者はジャケット変えろ、と叫んだことだろう。
オザーク・マウンテン・デアデヴィルスは現在も活動を続けるミズーリ州のカントリーロックバンド。74年の「ジャッキー・ブルー」が大ヒットして全米チャート3位まで駆け上る。この曲はとても印象的で日本でもヒットした。メインのボーカルとソングライティングはラリー・リーだ。
82年にリリースした意欲的なソロ・アルバムは残念ながら本国アメリカではほとんど話題にならなかった。しかしメロディーの良い軽快でPOPなサウンドと、繊細なボーカル、そして「ジャケットとタイトル」の効果があったのだろう、日本ではそこそこヒットし、とにかく当時FMではとても頻繁にオンエアされていた。オーディオ関係の会社入って間がなかった私は自社製のテープデッキでエアチェックし、その時のテープが残っている。本国でももう少しジャケットを頑張れば良かったのかな、と思う。
ビートルズでさえ初期の時代はレコード会社が勝手にジャケットや曲順を変えて様々なバージョンを出していた。アルバムの意匠が統一されるようになったのは「ラバー・ソウル」以降だ。この当時の日本の状況は良く分からないが、さすがに今はこのようなやり方はできないだろう。しかし「このジャケット・タイトルでは売れない」と断定して作り直した当時のプロデューサーの強固な意思というか時代を見る目、そして強引さは、それはそれで良いのかな、と思う。
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