ジャクソン・ブラウン/LATE FOR THE SKY(1974年)
シボレー・ベルエア 第1世代(1950~54)
ジャクソン・ブラウン 77年のヒット曲「Stay」はとても印象的だ。これが彼を知るきっかけだった。デヴィッド・リンドレー のファルセットが独特のスパイスとして効いている。この時まだ彼がイーグルスのデビューシングル「Take It Easy」の作者であるとは知らなかった。2016年にグレン・フライが亡くなった翌日のライブで彼はTake It Easyを歌った。イーグルスのカバーを歌っていると思われている、と気づいて歌うのをやめていたんだ、と笑いながら語った。ジャクソン・ブラウンらしいナイーブさがよく表れた話だ。
「Stay」もローディーや観客に対する暖かい思いにあふれる作品だ。ローディーは日本ではボーヤなどとも呼ばれるコンサートの機材運びのスタッフ。ちなみにこの曲は60年に全米ナンバーワンになったモーリス・ウィリアムス&ザ・ゾディアックスの同名ヒット曲のメロディーに新たな歌詞を載せたものだ。オリジナルはビルボードNo.1ヒットの中で一番短い曲として知られている。
さて、写真のアルバムは1974年の3枚目のアルバム「LATE FOR THE SKY」。全米14位を記録してミリオンセラーとなった初期の重要アルバムだ。有名なベストセラーにもかかわらずこのアルバムにはシングル・ヒットが1曲もない。アレンジも実にシンプルだ。密度の濃さと全体の統一感・整合性が高いレベルでバランスしていることが魅力なのだろう。メロディーと歌詞の力だけでミリオンセラーを果たすのは並大抵のことではない。このアルバムはイーグルスの「Hotel California」等と並んで70年代初頭のウェストコーストロックを代表するアルバムとしての評価も高い。
アルバムカバーの写真はボブ・シードマン。タイトルのレタリングはリック・グリフィン。これはニールヤングの「On the beach(渚にて)」と同じだ。そしてカバーのコンセプトはルネ・マグリットに触発されてジャクソン・ブラウン自身が行ったとクレジットされている。ロサンゼルス郊外の夕暮れの住宅街、すぐに動き出しそうな初期のシボレーは曲の中に現れる重要なモチーフだ。クルマは1950~54年の初代シボレー・ベルエア。ポピュラーなファミリーカーだ。
アルバム4曲目の「THE LATE SHOW」にこの古いシボレーが登場する。僕は道路の向かいの車の中にいる。シボレーの古いモデルだ。君は悲しみを袋に詰めて捨て去る。そして僕たちは出発しよう。~最後に運転席・左のドアが閉まる音、しばらくして右のドアの閉まる音。そしてクラシカルなエンジン音。ここでもクルマは実の多くのことを語っているのだ。
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